秘密の地図を描こう
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ミゲルから『アスランを帰してほしい』と連絡が来たのはその日の午後のことだった。
「何か、大きな作戦があるらしい」
その後、二人だけで会話を交わしていたアスランがこう言う。
「なら、仕方がないな」
さっさと帰れ、とバルトフェルドが真顔で言う。
「とりあえず、次に来るときには事前に連絡をしろよ」
カガリも笑いながら口にする。
「わかった」
「ただし、まだ完全に許したわけじゃないからな」
念を押すように彼女は続けた。
「……わかっている」
小さなため息とともにアスランはこう言い返す。
「なら、適当にがんばってこい。けがをしたらキラも悲しむからな」
不本意だが、と彼女は口にする。
「そうですね。こちらが動かなくてすむようにしてください」
それと、とニコルは続けた。
「ミゲル達にも、くれぐれもけがはともかく、戦死しないように……と伝えておいてください」
そんなことになったらゆっくりと眠れると思うな、と彼はさりげなく付け加える。
「……しっかりと伝えておく」
一瞬いやそうな表情を作ると、アスランがこう言い返してきた。
「じゃ、気をつけてな」
カガリのこの言葉にアスランはうなずく。そのまま、自分の機体へと乗り込んでいた。
「……地球軍の本拠地に総攻撃を仕掛けるところか?」
その後ろ姿を見送りながら、カガリがそう呟く。
「あるいは、ブルーコスモスかもしれません」
先日確認したエクスンテッド養成機関のマザーその他のデーター分析から場所を特定できたらしい。ニコルはそう続けた。
「なら、私たちは動かない方がいいな」
そちらに関しては、とカガリはうなずく。
「そうですね。アスランまで呼び戻されたのなら、かなり大きな作戦ですね」
自分達が出る幕はないだろう。
「と言うことで、キラにはそう説明しておくか」
アスランを見送りながら、カガリはそう口にする。
「個人的には、オーブがどう動くのかが気にかかりますが」
正確には、セイランが……とニコルは言った。
「さすがに介入しないとは思うが……」
いくらセイランでも、とカガリが呟く。
「でも、セイランだからな」
馬鹿さにおいては他家の追随を許さない、と彼女は付け加えた。
「あいつらのこともあるし……オーブに連絡を取っておくか」
杞憂で終わってくれればいいが、とカガリが顔をしかめた。
「どちらにしろ、オーブに被害が及ばないようにしないといけないことは事実だな」
そのために何ができるのか。それもみんなと相談しなければいけないだろう。自分だけではまた失敗するかもしれないから、と彼女は続けた。
「そうですね。でも、失敗してもフォローできることならば失敗してもいいと思いますよ」
ニコルはそう言って笑う。
「それに、誰かに相談するのは悪いことじゃありませんし」
彼はそう続けた。
「そう言ってもらえると安心できるな」
もっとも、いつかは自分だけでやらなければいけないのだろうが……と彼女は笑う。
「あいつがもう少し役になってくれればよかったんだが」
期待していたんだ、と小声で付け加える。
「もう少し性根をたたき直したらマシになるんじゃないですか?」
アスランも、とニコルは言い返す。
「だといいがな」
言葉とともに彼女はきびすを返した。そのまま皆がいるであろうブリッジへと歩き出す。ニコルもその後を追いかけていった。